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戦士の休息

クリスマスムード満載の大阪は梅田界隈。
阪急デパートから阪神デパートをひやかし西梅田駅に向かう地下街の途中
ふとウインドウディスプレイに惹かれて
吸い寄せられるかのように立ち寄ったブティック。
薄手の上品なカーディガンや、シルクのブラウスを
ハラリと広げたり胸にあてがって鏡を見ているうちに
何故だかだんだん冷めた気分になっていく可哀想な私がいた。



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母の介護負担は確実に増えてきている。
まだ自宅介護で頑張れると思う自分が
時々とてつもなく偽善者に思えてしまうことがある。
果たして母にとって何が一番いい事なのか。
私は一体何と戦っているのか。
わからないまま時間だけが過ぎていく。

イケナイイケナイ…

母をデイサービスに預けて
さあ束の間の息抜きにイザとばかり出掛けてはみたものの
いつものジーンズにセーター、靴だけはショートブーツを履いてはいたが
もう少しオシャレしてくればよかった。

こんなお店に何で入ってしまったんだろう。

さほど広くない店内、
買う気もないのに店のマダムに勧められるまま散らかしすぎてしまって
買わずに出る機会を逸していたその時、
若い女性が店内に飛び込んできて、いきなりメモを広げてマダムに尋ねた。
「ハービスENTに行きたいんですけど」・・・・・
これ幸いと、マダムが説明し始めたのを機に私はそこを出た。
そしてふと自分も久しぶりにそこまで行ってみようと思い立った。
くだんの若い彼女は、すぐに私に追いつき追い越していった。
人波の中をスイスイと、キャスター付きの鮮やかなミントグリーンのトランクを
後ろ手にガラガラと引きづりながら。
しかし彼女、角を曲がって広い場所に出るとわからなくなったのか一瞬立ち止まり
すぐに又早足で跳ねるように歩き出したのだが・・・・・・。
そっちは残念ながら反対方向だ。





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大都会の主要な駅の構内や地下街は慣れてないと分かりにくい。
お節介の虫が騒ぎ出したか、私は人混みを掻き分け早足で追いつくと
「あのぉ、あなたハービスENTに行きたいんでしょ。こっちですよ」と教えてあげた。
いきなり見知らぬおばさんに話し掛けられても訝る様子もなく、
彼女は当たり前のように、私に向かってニコリと笑うと
「あ?そうですか」と言って、又もや跳ねるような歩調で
例のガラガラを引きずりながら急いで行ってしまった。
最近はめっきり歩くのが遅くなったと自覚している私には
何だか眩しくさえ感じられる軽やかさで…。
ところがだ。
もう、すぐそこだから間違えようもない、そう思った私が甘かった。
イヤイヤそういうことじゃないだろう。
それにしても入り組んだ迷路のごとき地下街にあって
この若い女性は辺りを見回したり上を見上げて確認することをしない。
あちこちにインフォメーションや指示の案内板があるというのに。
ただ真っ直ぐ先を急いで、見事に間違った道を歩いていく。
ああこうして彼女がアサッテの方向に行き続けちゃったとしても、
その責任が私にあるのか?
いやはや困ったもんだ。

私はかなり先を行く彼女を必死で追いかけ叫んだ。

「違いますよ〜あの〜 ちょっとぉ! オジョーサアン!!」
何とか追いついた。
「行き過ぎですよ。こっちに大きく書いてあるでしょ?」
「あ?本当や!スミマセン。わざわざありがとうございます」
「教えた手前ね…間違えられるのは見過ごせないから」




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ペコリと頭を下げ、
やっぱり跳ねるようにズンズンとハービスENTの中に入って行く彼女を
しばらくの間役目を全うしたガイドのように見送った。
その時の私の心には、束の間清々しい風がそよいだ気がしたが
次の瞬間には、母の帰宅までの残り時間を確認する私がいたのだった。












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by marucox0326 | 2016-12-23 20:01 | 話の小部屋 | Comments(6)

照る日もあれば曇る日も・・・。そんな日々の戯言です。


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